おすすめの蓄電池メーカー5選
蓄電池は、文字通り電気を蓄えておける装置です。太陽光発電が増加するにつれ蓄電池の販売数も増えていきました。そうなると、どの会社の蓄電池を選ぶべきか迷ってしまうかもしれません。今回は業界でも実績を積み重ねてきたシャープ、パナソニック、ニチコン、ダイヤゼブラ、オムロンの5社を取り上げて特徴を解説します。
太陽光発電と蓄電池を設置するメリット・デメリット
太陽光発電と蓄電池を設置するのであれば、メリット・デメリットを理解しておく必要があるでしょう。ここではメリット・デメリットについて、分かりやすく解説します。
電気代節約をはじめさまざまなメリットがある
太陽光発電を設置すれば、電気代が削減できたり売電収入が得られたりと、経済面で大きなメリットが得られます。太陽光発電は、太陽光というエネルギーから電気を生み出すシステムであり、発電した電気は自宅で消費できることから、電気代を節約できるでしょう。
さらに、余った電気は電力会社に買い取ってもらい、売電収入を得ることが可能です。国の認可などの手続きが必要ですが、設置してから10年間は固定価格で買い取ってもらえるため、電気代を節約したい方にはメリットが大きいでしょう。
一方で、電気は性質上、貯めておくことができず、日中に発電した分を夜に消費するということはできません。蓄電池があれば電気を貯められるため、日中に発電した分を夜間・早朝に使うなどして、電気を買う量を減らせるでしょう。
また、蓄電池から電気自動車に充電もできます。日中に車を走らせて、帰宅後に貯めた電気で充電すれば、太陽のエネルギーを100%使ったエコな車生活を送れるでしょう。
費用や設置場所など設置におけるデメリット
まずデメリットとして、設置にコストがかかることが挙げられます。経済産業省によれば、2022年の新築住宅における太陽光発電設置にかかった費用は、1kWあたり平均で26.1万円と報告されています。容量5kWのソーラーパネルを搭載する場合、約130万円の費用がかかる計算になります。
一方、容量が4kWhから16.6kWhの蓄電池を取り付ける場合、本体にかかる費用として100万円から160万円ほどかかるとされています。住宅の仕様や搭載するメーカーによって費用は異なりますが、太陽光発電・蓄電池両方を導入する場合、大きな費用がかかる点はデメリットだといえるでしょう。
また、蓄電池は容量により貯められる電気の量が異なり、容量が小さければ使える電気量が少なくなります。容量が大きいものはそれだけ費用が上がるため、ご家庭に最適な容量の製品を選ぶことが大切です。
さらに、蓄電池の取り付けには、大型サイズの空気清浄機ほどのスペースが必要で、高温・低温にならず結露しない場所が理想です。近年、蓄電池のサイズは小さくなってきていますが、事前に設置場所を検討しなければならない点も、デメリットの一つでしょう。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせてできること
太陽光発電と蓄電池をあわせて使うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここからは太陽光発電と蓄電池の併用でできることについて、詳しく解説していきます。
電気代を節約できる
太陽光発電で発電した電気は、貯めておくことができません。しかし、蓄電池があれば、日中に発電した電気を貯めておき、夜間・早朝などに使えるため、電気を買う量を抑えられます。
電気代が安い時間帯に電気を貯めて、電気代が高い時間帯に貯めた電気を使うプランにすれば、電気代を大幅にカットできるでしょう。太陽光発電・蓄電池の容量や、ご家庭での電気の使い方・使う量によって節約できる費用は異なります。
また、日中は仕事で不在にしており、電気をほとんど使わないという方もおられるでしょう。どのようなプランが最も節約できるのか、あらかじめ電力会社に相談したりシミュレーションしたりしておくと安心です。
長期間の停電対策が可能
太陽光発電と蓄電池の2つを設置していれば、地震や台風、豪雨など大規模な災害が起きたときでも自宅での生活を続けられます。太陽光発電で発電できたとしても、蓄電池がなければ、太陽が照らない夜間・早朝は電気が使えません。
また、悪天候が続けば、発電自体も難しいでしょう。天候がよいときに発電して、蓄電池に貯めておけば、災害時でも照明や家電に使う電力を確保できるため、自宅でこれまで通りの生活を続けられるでしょう。
特に、高齢者や病気の方・乳幼児がいるご家庭では、災害時でも電気がないと暮らせないケースがみられます。太陽光発電と蓄電池を併用していれば、万が一のときにしっかり備えられるでしょう。
環境にやさしい暮らしを実現
太陽光発電と蓄電池があれば、太陽の力を使って自給自足できるため、環境に優しい暮らしを実現できます。日本はエネルギー自給率が先進国の中でも特に低く、国も将来に向けて自給率を上げる政策を立てています。
太陽光発電と蓄電池の運用プランによっては、電力会社から電気を買わずに、自然由来のエネルギーだけを使って生活を成り立たせることが可能です。日本が抱えるエネルギー自給率の課題を解決することにつながるでしょう。
また、太陽光発電や蓄電池は、経済面でのメリットが注目されやすいですが、持続可能・低炭素社会の実現にも役立ちます。環境に配慮して暮らしたい方や、省エネルギーを意識した生活を心がけたい方には、太陽光発電と蓄電池の両方を設置することをおすすめします。
家庭用蓄電池の費用
家庭用蓄電池を設置するには、本体価格・設置工事費用・諸経費の大きく3つの費用がかかります。ただし、自治体によって補助金制度が設けられているケースがあるため、定員や募集期間・条件について事前に自治体に問い合わせておくとよいでしょう。
蓄電池本体の価格は、経済産業省の調査によると2019年度は1kWhあたり13.7万円と示されています。また、工事費用については、全体の75%が約40万円以下であり、平均33万円であったと報告されています。
仮に5kWhの容量の蓄電池を設置する場合、本体価格は68.5万円となり、工事費の平均33万円を足して、約100万円の費用がかかる計算になります。ただし、本体価格については、導入する蓄電池のメーカーや容量によって大きく変動するため、注意しましょう。
ご家庭に必要な蓄電池の容量を、あらかじめシミュレーションしておくと安心です。また、蓄電池の性能が高いものほど費用は上がるため、機能面の取捨選択も大切になります。
工事の内容についても、蓄電池の設置環境や施工する業者によって異なります。ご家庭に最適な条件で蓄電池を導入するために、メーカーや施工する業者は見積もりをとって比較検討しましょう。
蓄電池の選び方とポイント
ここからは、蓄電池の選び方・ポイントについてご紹介していきます。
容量や寿命などが重要なポイント
蓄電池の容量や寿命は、選ぶ際に重要なポイントになります。普段、電気をあまり使わない方であれば4.2kWh、電気をよく使う方は8.4kWh以上の容量がおすすめです。まずは、ご家庭で1日にどれくらいの電力を使っているのかチェックしてみましょう。
また、蓄電池は、保証された充放電の回数を上回ると容量が徐々に減っていきます。メーカー・製品によって充放電の回数が異なるため、購入する前に、蓄電池の寿命がどれくらいなのか把握しておきましょう。
さらに、停電時に使える電気の最大量まで把握できれば、安心です。
保証の内容・期間も要チェック
蓄電池の容量や価格も大切ですが、保証期間や内容にも注目する必要があります。多くのメーカーでは、10年~15年の保証がついていますが、10年目以降は有料であるケースもみられため、チェックしておきましょう。
保証の対象が本体だけなのか、ケーブルなど周辺機器まで含まれるのかについても、確認しておくとよいポイントです。また、蓄電池の容量が一定のパーセンテージを下回った場合に、修理・交換に対応してもらえるケースもあります。
修理・交換の基準となるパーセンテージは、メーカーによって大きく異なるため、容量の保証についても確認しておくのが理想です。
次の項目からは、おすすめの蓄電池メーカーを見ていきましょう。
シャープ
シャープは国内蓄電池シェアトップクラスのメーカーです。シャープの蓄電池はAIを活用したCOCORO ENERGYを搭載しており、自動で運転を調節してくれます。日射量の予報値や発電データ、生活パターンなどから蓄える電力量などを自動調整してくれます。
太陽光発電と組み合わせやすいというのもシャープのメリットです。シャープの太陽光発電設置数は85万件です。これは、既存の設置数の3分の1に相当します。太陽光発電装置と蓄電池、HEMSの全てをセットでシャープ製にすることで機能や保証、サービスなどが充実します。
停電時に役立つのが先ほど紹介したCOCORO ENERGYです。停電リスクが高くなるような気象警報と連携し、警報発令時に自動で充電します。停電は地震などの大規模災害だけではなく、落雷などでも発生するので、それほど珍しいことではありません。蓄電池があれば停電が起きたときでも安心です。
ちなみに、停電時には蓄電池から自動で電気が供給されるようになるので、その点でも安心です。また、COCORO ENERGYは使えば使うほど賢くなるという特徴があります。COCORO ENERGYは新しい機能が追加されると、自動的に自宅の蓄電池もバージョンアップしてくれます。
パナソニック
パナソニックは日本屈指の電機メーカーであり、太陽光発電や蓄電池の分野でもトップクラスのシェアを持っている企業です。パナソニックの電池事業の歴史は古く、戦前から開発していました。
パナソニックの特徴はラインナップが豊富なことや高い信頼性、充実した長期保証の3つですが、最大の特徴は太陽光発電と組み合わせた創蓄連携システムです。創蓄連携システムは太陽光発電と蓄電池を連携させて効率よく電気を活用する仕組みのことです。
太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、電流を変換するためのパワーコンディショナーが2台必要となり、その分だけ電力ロスが発生していました。創蓄連携システムの太陽光パネルで発電した電力は、パワーコンディショナーを通じて蓄電池に貯められます。
このとき、発電した時の直流電流を交流に変換することなく蓄電池に貯められる仕組みであるため、電力の変換ロスが少なく、発電した電気を有効利用できます。
蓄電池を上手に使えれば、自宅で使用する電力のほとんどを自家発電でまかなえるようになり、電気代を安くできるかもしれません。また、曇りの日など天候不順で発電量が不足するときは、晴れている日に蓄電池に貯めた電力を使えるため、リスク管理としても効果があります。
蓄電池単体のリチウムイオン蓄電システム「スタンドアロンタイプ」もあります。台風や地震などの自然災害や落雷による停電リスクに対応するため、非常用のバックアップとして蓄電池を活用する場合はスタンドアロンタイプで十分です。
ニチコン
ニチコンは、家庭用蓄電システムの累計販売台数が国内ナンバー1のメーカーです。累計販売台数が多いのは、それだけ多くの購入者を満足させてきたからといえるでしょう。
ニチコンの蓄電池は、トライブリッド蓄電システムとハイブリッド蓄電システム、単機能蓄電システムの3種類です。トライブリッド蓄電システムは太陽光発電と蓄電池、電気自動車の3つを組み合わせた仕組みのことで、電力の自給自足を目指せます。ハイブリッド蓄電システムは太陽光発電と蓄電池を組み合わせた仕組みのことです。
蓄電池の性能が高いのもニチコンのメリットです。ニチコン蓄電池の最大容量は16.6kWhです。エアコンを21時間使用すると6.3kWh、冷蔵庫を24時間使用すると1.2kWhの電力を使用します。単純に、冷蔵庫の消費電力量だけで計算してみると充電なしで2週間近く稼働できます。
蓄電池には一部分だけに電気を供給する特定負荷タイプと、全ての部屋に電力を供給する前負荷タイプがあります。ニチコンの蓄電池は全負荷タイプです。
家中どこでも電気が使用できるので安心です。さらに、200Vにも対応しているのでIH調理機やエアコン、床暖房などの電化製品も停電中に動かせます。オール電化住宅で停電すると家の機能が止まってしまうような家庭では、蓄電池は必須の装置といってよいでしょう。
ダイヤゼブラ
ダイヤゼブラ電機は大阪市にある電気機器メーカーで、以前の社名を田淵電機株式会社といいます。現社名に変更されたのは2021年からなので、旧社名の方がよく知られているかもしれません。
ダイヤゼブラの蓄電池には、リン酸鉄リチウムを採用しています。広く用いられているリチウムイオンに比べると寿命の長さや安全性において勝っています。リチウムイオンと比べるとリン酸鉄リチウムはフル充電で繰り返し使える回数であるサイクル回数がかなり多くなります。
つまり、充放電できる回数が多く寿命が長いのです。リチウムイオンが220℃以上で熱分解してしまうのに対し、リン酸鉄リチウムは600度まで耐えられます。
その反面、電池として加工するのに手間がかかってしまうため、価格が高くなりがちです。初期費用が高くても長期間使いたいのであれば、ダイヤゼブラの蓄電池は有力な選択肢となるでしょう。
ダイヤゼブラの主力機種はEIBS7(以下、アイビス7)です。アイビス7には4つの運転モードが搭載されています。夜間に蓄電するスマートモードや太陽光発電と組み合わせて電力自給率を高める節エネモード、売電を優先するノーマルモード、非常時に備えて蓄電を最優先する蓄電モードの4つです。
ライフスタイルの変化に応じて、家族にとってその時々に必要なモードを選択できるのが魅力です。
オムロン
オムロンは、幅広い分野で事業を展開している国際的な大企業です。制御機器事業やヘルスケア事業、電子部品事業に加え蓄電池も手掛けています。
オムロン蓄電池の特徴は、ライフスタイルによって蓄電池の種類や組み合わせを選択できることです。
蓄電池単体で導入するなら単機能蓄電システム、太陽光発電とセットで稼働させるならハイブリッド蓄電システム、停電時に全ての部屋の電化製品を動かしたいなら全負荷対応型ハイブリッド蓄電システムというように、自分の要望に応じて蓄電池のタイプを選択できます。
蓄電容量は屋外設置の12.7kWhタイプと6.3kWhタイプ、屋内・屋外の両方に設置できる6.5kWh、9.8kWh、16.4kWhの3タイプから選択可能です。停電中も普段通りで生活したいのであれば全負荷対応型ハイブリッド蓄電システムで、容量が大きい12.7kWhタイプを選択するとよいでしょう。
コストパフォーマンスを重視するなら、既設の太陽光発電システムと単機能蓄電システムを組み合わせるという方法があります。
環境にやさしい生活を志向するのであれば、ハイブリッド蓄電システムと最大容量の16.4kWhタイプの蓄電池を組み合わせて、できるだけ電力会社から電力を買わない仕組みを作ることもできます。
このように、自分が目指すライフスタイルに応じて蓄電システムを選べるのがオムロンの強みです。
まとめ
今回はシャープ、パナソニック、ニチコン、ダイヤゼブラ、オムロン各社の蓄電池の特徴を解説しました。どの企業も国内上位の蓄電池メーカーであり、高い性能を持った蓄電池を販売しています。
どの製品を選ぶかは予算や要望によって決めるかと思いますが、自分がどのような生活スタイルをしたいかを念頭に入れ、専門家のアドバイスを聞きながら設置するのがよいのではないでしょうか。